(1−1)料理用の燃料エネルギー

(i)バイオガス

有機物(陸海を問わず、光合成で育った植物、それを食べて育った動物、その排泄物、それ らを食する我々人間の排泄物をここではさす。すなわち、太陽エネルギーによって与えられ たものである)が好気性菌、嫌気性菌の活動を経て、バイオガスを発生することはよく知ら れている。これを具体的にセプティックタンクとして設計し、日用に供せられている(尾関 式EMG)。得られるバイオガスの成分は、メタンガス60%、炭酸ガス40%である。一人の一か月 の糞尿から12日分の料理用燃料が得られるといわれる。現場で採用しているシステムを図に 示す。


セプティックタンクのシステム

トイレでは、普 通のフラッシュでは水が多すぎて、バイオガスが発生しにくいので、簡易便 器(一踏みで280ccの水が出る)を使っている。しかし、この水量では不足なので、洗浄器も 併用している。これは製造過程で多くの公害を出す紙の使用量も減ずる。 先ず、トイレからの糞尿は最初の好気性菌の槽へ、台所からの生ゴミと一緒に投入される。 沈んだものは、斜面に沿ってつぎの嫌気性菌の槽へゆき、低温メタン菌(摂氏−20度まで活 動が可能といわれる)の活動によってバイオガスを発生する。この槽からフィルター(脱硫 剤)を介して、バイオガスを取り出しているが、8~13kpa(80cm~130cmの水底での圧力)を 記録している。残りは、病原菌生命短縮装置を経て、最後の監視用の槽が設けられている。 この様にバイオガスは、水封されているからいつでも使える。脱臭された後、圧力調節弁を 通って台所のレンジに導かれる。レンジで燃やしている図を示すが、このガスの混合比での レンジは、よく設計法の確立された都市ガスの範囲になく、別途設計が必要であろう。 ここで特筆すべきは、投入した有機物が全てバイオガス化することである。現状ではこれら 有機物を燃やしたり(大きなエネルギー損失であり炭酸ガスを出している)、河川、海へ投棄 しているが、それらのエネルギー損失や富栄養化を心配しなくてすむことである。また、鉄 道駅、空港(オークランド空港のような小さな空港でさえ1日7トンの生ゴミを出す)、多くの人の集まるとこ ろでは糞尿のみではなく、残飯も多く排出する。後者は体液を通していないので、バイオガ ス化へは効率は悪いが、光合成で得られた貴重なエネルギーであることを忘れてはならない。 後述するように、この一連のプロセスでサイクルを閉じなければならない。


洗浄器つきのトイレ ガスバ−ナ− 

植物の光合成は、約4.6~4.7%といわれている。それに基づいた食料を食べて排泄されたもの には、まだ、相当エネルギーが温存されていることを示しており、無駄にしてはならない。 太陽エネルギーに依存するには、地表面を一定量覆わねばならない。ここでの過程 もその一端であり、大きな位置を占める。付言すれば、人間が生存する限り返ってくる貴重 なエネルギーである。


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