実験住宅では、先に示した様に、屋根部にソーラールームと呼ぶ浮力を得るための部屋を設けている。
外気に面する窓は二重ガラス張り、住宅内部との境界は60cm厚に羊毛を充填し断熱した部屋となっている。
上部には煙突があり、この部屋の床から入る空気が出てゆく。したがって、夏暑ければこの部屋の空気温度が
上がり、軽くなってより多くの浮力が得られ、地下室からのより多くの冷たい空気が居室部へ流入する
はずである。
この理屈は、次の三つの式をつなぎ解くことによって示される(簡略化して示した図を参照)。
熱伝導の式
室の熱収支式
ベルヌーイの式
この地中熱利用による手法においては、夏冬両方の季節について使用しなければ、
一方のみだと他方の条件が悪くなる。この方法では、絶えず外気との換気だから、その時の空気は
何時も新鮮だ。夏の地下室での除湿は場合により必要だろう。多孔質性の自然に優しいものを探している。
ソーラールームの床には、6個の水槽が並べてあり、夏の日没後の浮力を得る。その温水は、
浮力を得るという目標を阻害しない範囲で、シャワーや皿洗いにも使われねばならない。(後述する。)
次に、 夏、冬それぞれのある一日の室温変化を計算値と共に図に示す。
夏のある日の室内の温度変化(点線は先の式によって計算された結果)
冬のある日の室内の温度変化(点線は先の計算式によって得られた結果)
冬季は日平均気温よりも室内は数度高い。外気が0度近くでも10度近辺を保っている。しかし、日中の外気の
高温を取り込めなくなっているのは改善されるべきである。この地の場合、庇を短くし、日射を取り込むことが
先ず考えられる。その他、外で集熱した熱量を室内で解放する方法も考えられよう
(多孔質による集熱の項参照)。
ヒートアイランドを呈している日本の都市部では、ことに、昔の熱環境に戻るまではこの方法が有効となろう。