(ii)太陽エネルギー収集による調理器具

ここでは、太陽光を直接取り込んで熱に変換する調理器具をさし、ソーラーオー ブンとソーラークッカーに分け て説明する。天候に大きく左右されるが、意外に大きなエネルギーが得られる大切な手法であり、晴天時に そのときの料理のみでなく、保存食(ジャム、乾物など)の料理、あるいはプラスチックの溶解、成型にも 利用することが出来よう。


(a)ソーラーオーブン


 太陽光に向けた大きな開口に入射するエネルギーを、直接進入及び開口側面で反射させて、黒塗で断熱された低部の箱に蓄熱する方法で図に概略を示す。上部 の反射鏡と熱を閉じこめる底の箱とは、それらの接合部で取り外しが簡単に出来るようにしてある。反射鏡の材料は、段ボール紙の上にミラープレート(商品 名)を貼っているが、段ボールは水に弱いので薄い合板などに変えるのがよいと思う。NZの現場では、断熱材に羊の毛を使っている。

図のソラーオーブンの 反射面の反射係数を0.7、箱上部のガラスの透過率を0.8、 箱内表面の放射吸収率を0.8、 箱壁面の熱貫流率を0.64kcal/㎡hr゚C、 箱内表面材の熱容量を0.352kcal/㎡゚Cとして、 実験した日の直達日射量(75~380kcal/㎡・hr) を代入して、箱内部の温度を前進差分によって計算し、箱内の空気温度の測定値と図に比較する。 ただし、空気の比熱は、その時の温度を変数として公式により求めた。また、高温になった空気は体積が膨張し、 一部は隙間から熱を持って箱の外に逃げる。そのため、計算値が後の方で若干大きめになっている。 開口の面積も当然大きな要因の一つであるが、側面で反射した光がすべて下部の箱へ入射するようにするには、 幾何学的な制約があることに注意せねばならない。



この時、開口の反射面はそのままにして、次図に、オーブンの箱部分の種々のパラメーター、すなわち、
    (i)箱壁面の熱貫流 率 K
    (ii)箱内表面材の熱容量 CAP
    (iii)箱の容 積V
を変えた時の温度変化を先の直達日射量が、
(a)270~440kcal/㎡・ hr と (b)590~640kcal/㎡・hr
と 変化した時の実測値に対して、計算した結果を示す。各種料理の温度変化に対して、日射量を参 照しながら、これらを調整してソラーオーブンを設計することができる。

一つの料理を終えて、次の料理に移るまでの入れ換え時の熱損失を小さくする 工夫の一例を次図に示す。反射板表面の劣化は、直接取得エネルギーに影響する。高反射率の表面を持ち劣化しにくいものが欲しいところだ。
なお、オ−ブン内上下で、大きい時は、40℃の差ができた。撹拌してやる必要があろう。


(b)ソーラークッカー


図に写真と共に示すごとく、凹曲面の焦点にエネルギーを集める方法である。反射面の間口は100.6cm x 100.6cm で、枠組みを薄い合板で、16.7 cm角の格子に分け、ソラーオーブンの反射面の材料と同様の材料を切って 全面に貼った。焦点距離は50cm。最初は、直径14cm、深さ6.5cmの小さな薄いアルマイト製の鍋を用い、 低面外側を黒く塗り、熱(長波長成分)が逃げないように、その外部に約4cmの空気層をとり、 耐熱ガラスで覆い断熱した。さらに鍋の蓋も耐熱ガラスとした。ガラスの厚みは図に示すとおりで、 これを支えるのは鉄製のアングルで、それを、12mm厚の板で支えている。全体の重量は、約14kgであった。 反射面の反射率0.65、植物油の比熱2.04(J/g・K)、日射吸収率0.8、その他の変数と数値を基に計算した結果と 測定値について、次図に比較する。

日本でもこのクッカーと同様 のものを作成し、300ccの植物油を満たし集 熱したところ、 快晴時に油の温度は260度まで上がった。この時の様子とその計算値を図に示す。その後、 冷凍保存していた揚げる準備のできたコロッケを揚げたが、その時の各部の温度変化は、図に示すようになり、 かりっと揚げることができた。なお同図に、その時の外気温、直達日射量も示す。

コロッケ料理の時の写真


こ の鍋のように平らな底を持つ場合、その底で受ける熱量は、それを小さな平 面にわけ、やはり区分された 反射面の各部から受ける量の合計として簡単に計算できる。低面では反射光を放線方向に受ける方が効率は よいはずであり(特に日の出、日の入り近くで)、さらに鍋の形を検討している。
ビフテキの料理のように熱容量のあるものの料理には、鍋にもそれ用が必要である。ビフテキを焼くために、 3㎜厚のステンレス鍋に置き換えた所、焦げ目もうまくつき、焼くことが できた。

引用文献
1)B.&D. Halacy;"Cooking with the sun",Morning Sun Press,1978.
2)クリ−ンエネルギ−利用研究会; "ソ−ラ−クッカ−", パワ−社,1995